【聞書き】梅本さん 大正6年生まれ (3) 最近のこと

 【 最近のこと 】

 

歳は取ったけどね、まだ認知症じゃないよ。
頭は使わないとダメだからね。毎日、新聞読んでます。耳は遠くなったけど、目と頭は大丈夫だから。
年取ると、新聞も読まなくなってラジオも聞かなくなって、だんだん世の中のことが分からなくなっちゃう。そういうのはよくないから。
それから寝る前にね、百人一首を暗唱してます。
 逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり 、とか。
電話番号も覚えてます。熊本の親戚、島原の番号。
島原はね、姉がお嫁に行ったの。

最近の人は、酔っても歌を歌わないね。私の頃はね、みんな酔って歌を歌ったのよ。(歌う)
こんな古い歌は、最近の人はもう知らないでしょ。

きららに行ってもね、デイケアね、みんな居眠りしたりして、私はみんなのお世話してるの。男の人でもね、よだれ垂らしたりしてね。拭いてあげるの。私より若いのにねえ。
若い人たちが働いているからね。動ける人はお手伝いしないと。ぼんやりして迷惑かけてるばかりじゃダメだから。
そうしたら、梅本さん助かるわ―って、喜んでくれる。役に立たないとね。
歌を歌ってあげたりね。若い人の知らない歌だから、年寄りは喜ぶの。慰問に行ってるようなもの。

ご飯はね、きちんとこうして正座して食べます。
女だからね。だらしなくないようにしないと。


年取ると、あまり楽しい事はなくなってくる。友達もへっちゃうし。兄弟も亡くなってしまうし。
でもね、ご飯はおいしいのは楽しみ。
ご飯がおいしいのがありがたい。
あと、3年生きられるかなあ。